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九州の気候に合う家づくり
九州は暑くて案外寒い

 九州は暖かい。他のエリアから見るとそう思われがちですが、日本海側や山間部の冬は意外と寒く、夏の暑さも厳しく感じます。外気の影響を和らげる「断熱性」や「通気性」は、九州の家づくりを考える上で最優先事項です。
 『アトリエ艸舎』の一級建築士の鈴木達郎さん・美奈さん夫妻は、風の流れや空気の特性を活かしながら、夏の暑さや冬の寒さを和らげる家づくりを提案しています。その大きな特徴は、室内と室外をゆるやかにつなぐ『外の間』という手法。これは、建物と建物の間に風を通す”穴“のような空間で、壁のない渡り廊下のようなもの。リビングであったり玄関であったり、何かしら機能を持っています。
 「建物に風を取り入れ、家の中と外をつなぎながら、気持ちよく暮らす。『外の間』は、北日本のような長く厳しい冬のない温暖な九州だからこそ、無理なく実現できると言えるかもしれませんね」と鈴木さん。
 『外の間』に見られる風や空気を一所に止めない発想は、家全体の断熱性を高める設計にも取り入れられていました。

鈴木達郎さん・美奈さん

1996年『アトリエ艸舎』を大阪で開設。2000年福岡県遠賀郡に移住。自然と寄り添い、共に暮らす住宅に注目が集まる。 宗像市のS邸は「第26回福岡県美しいまちづくり建築賞」の受賞作。

 「暖かい空気は下から上に流れます。この性質を利用し、家屋内部を覆うように空気が流れる仕組みを作ることが大事」と鈴木さん。
ここでも要は、空気を取り入れるための”穴“や”隙間“。今回訪れたS邸には長い軒の裏側や、凹凸のある外壁の下側に”穴“や”隙間“があり、手をかざすと風が穴の中へと吸い込まれるのが分かります。
「取り込まれた暖かい空気は、屋根に設けられた出口へ向かって流れる設計です。家の外壁と内壁の間に、流動し続ける空気の層ができる。断熱材とこうした空気の層を併用することで、家の外と中との温度差が中和され、結露の防止にもつながります」。
1m20cmという長い軒は、厳しい夏の暑さをやわらげ、冬の暖かな光は取り入れることもできる日本建築の知恵。強い日射しや雨から壁を守り、家の傷みを防ぐ役割も担っています。さらに、厚さ4pもある天然乾燥の杉の床材は底冷えを防ぎ、障子は冷気を遮ります。日本古来の工法や建具にも、暑さ寒さを上手にしのぐ技がひそんでいました。

 空気の流れを利用し外気の熱を防ぐ機能を高めたり、風を利用したり、家の内装や外装にたくさんの木を使ったり、薪を燃料にしたストーブで室内を暖めたり。一見、S邸の家づくりは昔ながらの形に見えますが、今やこれが新しいのです。国は、2020年までに住宅やビルなど全ての新築建物を、次世代の省エネ基準に合うよう義務づけました。つまり、これからの住まいに「CO2削減・省エネ推進・再生可能エネルギー利用」の仕組みは欠かせません。一人一人が地球環境保全に積極的に関わる時代が目の前にきているのです。
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